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自動分注装置(分注機)とは

自動分注装置(分注機)とは

 

構成

分注装置は、試料・試薬を⾼速に⾼精度で⼀定量各ウェルに送るリキッドハンドリング系、ノズルのついたヘッドやプレートの移動を⾏う搬送系とこれらを制御するコントローラーで構成されています。

 

構成図

 

リキッドハンドリング

ポンプ、チューブ(配管)、ノズル(チップ)までの液体を操作する部分で分注装置の性能を左右する部分です。

ポンプは少量を⾼速に⾼精度で処理できるプランジャーポンプがよく使われています。分注精度を表すには、AC(正確度)とCV(変動係数︓標準偏差を平均で割ったもの)が⽤いられます。ACは絶対精度を⾒る指標で、CVは繰り返しの精度を判定する指標です。CVだけがよくても、定量分析には向かないこともあります。1ch、8ch、12ch、24ch、96ch、384chの装置があります。

搬送

プレートの搬送は通常、供給と排出だけの1⽅向です。プレートの搬送装置のない、⼿動の分注機もあります。ヘッドはチャンネル数と対応するウェルプレートの⽳の数によって、XYの制御が必要になります。さらに、分注機の機能によって、Z軸の制御も⾏われます。

コントローラー

リキッドハンドリングや搬送はコントローラーで制御されています。ノズルの制御は、分注だけでなく、希釈・撹拌・ノズル洗浄などの分注装置の機能によって、複雑さがまします。より複雑な分注装置では、ノズルの移動と組み合わせて⾏う機能やスタッカーを備えたシステムもあります。

その他

エリアと呼ばれるステージがいくつもある分注装置では、各エリアで、チップの⾃動交換、洗浄ができる。また、⽳数の違うプレートへのトランスファー、試薬槽の設置や固相抽出の⾏える分注装置もあります。

用途

分注装置は⽣物学、化学、医療の分野で、⾮常に多く使⽤されています。特に、ゲノム、創薬、DNA、臨床試験の分野では多くの分注装置が稼働しています。近年、ハイスループットスクリーニングによる処理のスピードアップが注⽬をあび、ますます、需要が⾼まっています。

 

ゲノム

ゲノム

マウス、ショウジョウバエ、酵⺟、線⾍などのモデル⽣物のDNA配列解析/ゲノムの研究、ゲノミクスからさらに、遺伝⼦の転写物を研究するトランスクリプトーム、タンパク質を研究するプロテオームへ/ショットガンシークエンシング法/PCR法

創薬

創薬

ハイスループットスクリーニング/有⽤細菌のスクリーニング/コンビナトリアル化学/毒性試験

DNA

DNA

DNA鑑定/法医学的DNA鑑定/動物の⾎統/⽣物進化の過程/微⽣物の同定/遺伝⼦組換え農産物/遺伝⼦発現解析

臨床試験

臨床試験

検体検査(⾎液、糞便、免疫分析、抗体反応)/ウィルス検査/⾷中毒時の⾷品検査/遺伝⼦多型(SNP)タイピング研究

特長

分注装置は、⼈間がピペットで⾏っていた作業を⾃動化することができます。なんと⾔っても、分注装置の第⼀の特徴は、⼈間が⾏うことのできない程の多量の作業を⾼速に⾏うことができることです。また、同時に、正確性もまし、作業ミスによる間違いも押さえることができます。

 

分注精度

分注精度を表すには、正確度と変動係数(標準偏差を平均で割ったもの)がよく⽤いられます。精度は、分注量によっても変わります。

 

分注速度

分注速度を表すには、処理能⼒として1分注にかかる時間で表記されます。処理能⼒は分注量や分注動作(例えばチップの交換)によっても変わります。

構成例

ゲノム、創薬、臨床試験の分野では、分注装置は単体で使われるより、各種装置との組み合わせで、全体の操作を⾃動化し、効率を上げることに 重要な役割を果たしています。分析評価⽅法(アッセイ)と⾃動分注装置が組み合わされた⾼速スクリーニング(HTS:High Throughput Screening)は、 研究開発が盛んな領域です。このような有る単⼀の⽬的の為にだけ構成されるシステムの他、試薬の調整や試料の前処理など1台で多種の操作を効率化するために、スタッカーなどと組み合わされることも多くなっています。

 

マイクロプレートリーダーとの連動

マイクロプレートリーダーはウェルプレート内で試薬と反応した試料を光学的に検査して、定量的にその反応を測定できる装置です。

臨床検査、創薬の分野では自動化を計るために欠かせない装置です。 検査だけが自動化されても、サンプル調製の前処理が自動化されなければ、全体の 効率は上がりません。そこで、前処理を自動分注装置で自動化することが求められています。

 

スタッカーとの連動

大量の試料を処理する場合、1536ウェルなどの大きなウェルプレートを使用しても、1枚では不足する場合、 ウェルプレートを重ねて格納できるスタッカーが使用されます。スタッカーから分注機に、また、分注機からスタッカーにプレートを搬送することができます。分注機とスタッカーは通信で同期がとられます。

利用ケース

分注装置は、その優れた機能と豊富なバリエーションから、様々な産業分野・研究領域において多種多様に活⽤されています。

 

ゲノムと分注装置

ゲノムと分注装置

⽣物の持つ全遺伝⼦情報をゲノムと呼んでいます。 細菌のような簡単な⽣物でも遺伝⼦が数百もあり、その遺伝⼦情報は数⼗万字にもなります。製薬などの応⽤に期待がかかるこの分野の研究には、膨⼤なデータを取り扱えるコンピュータによる解析が不可⽋で、バイオインフォマティクスと呼ばれています。 また、効率よく解析が進まなければ、30億とも⾔われる⼈間などの巨⼤なゲノムや多数の⽣物のゲノムを解析することはできません。そこで、ハイ・スループット=⾼い処理能⼒が装置には求められます。分注精度を表すには、正確度と変動係数(標準偏差を平均で割ったもの)がよく⽤いられます。精度は、分注量によっても変わります。

ヒトゲノム計画

ヒトゲノム計画はヒトのゲノムを解析するプロジェクトです。(2003年4⽉14⽇完了)この計画がうまくいく鍵となったのはショットガン・シークエンシング法をよばれる解析法です。遺伝⼦情報はATGCの4⽂字の組み合わせで表されます。しかし、この組み合わせは⾮常に⼤きく⼀度には解析できません。 そこで、解析できる数百から数千の組み合わせに、ランダムに切り分けます。ランダムに切り分けたDNAはベクターとよばれる特殊なDNAに組み込まれ、⼤腸菌などを利⽤して、⼤量に培養します(クローニング)。 このとき培養液の分注や菌を植え付けるのに分注機が利⽤されます。この後、DNAは読み取られ、ランダムに切り分けた部分をコンピュータを使って集計し、つなぎ合わせて、全体を解読します。

その他のヒトゲノム計画

ヒトゲノム計画は数あるゲノム解析計画の⼀つで、イネ、酵⺟、マウスやショウジョウバエなどのゲノムを解析する計画がいくつも存在し、 ⽣物学や医療、農業への貢献が期待され、研究が盛んに⾏われています。これらの研究施設では、分注装置が活躍しています。

創薬と分注装置

創薬と分注装置

新薬を開発する創薬は製薬会社の最も重要な事業の⼀つです。しかし、何もないところからスタートするのではなく、リード化合物と呼ばれる候補となる物質を合成したり、その⼀部を他の物資で取り替えたり、簡素化したりして最終的に、薬が作られます。

このリード化合物を選定するにも、⼤量の候補と作⽤させて、どれが効くか確かめなければなりません(スクリーニング)。⼤量の試薬とサンプル扱うこの作業に分注装置は⽋かせません。

アッセイ(分析評価)

いろいろなアッセイ(分析評価)が開発され、⾃動分注装置を利⽤した⾼速スクリーニング(HTS:High Throughput Screening)によって、⾃動化が進み、創薬のスピードアップが図られています。

DNAと分注装置

DNAと分注装置

DNAは遺伝情報を構成する物質で、その特徴的な部分(塩基)によりACGTの4種類があります。DNAは鎖状につながり、さらに、2本の鎖がこのAGCTでつながり、2重らせん構造になっています。AはTとGはCとしかつながらないため、それぞれの鎖は、分かれてもそれぞれの相⼿と同じ鎖しか複製できません。このことで、確実に遺伝情報がコピーされ、細胞分裂の際に、伝えられます。

DNA鑑定

DNAの配列は、各個体で違い、また、親から⼦へ引き継がれます。これを根拠に親⼦関係や犯⼈特定に威⼒を発揮するのがDNA鑑定です。しかし、60億有るといわれる⼈間のDNAをすべて読み取るのではなく、⼀定のパターンを⾒つけ、それが⼀致するか判定するものです。ごくわずかなDNAはPCR法によって、何万倍にも複製されます。PCR法は、温度を上げてほどけた、2本の鎖に、あらかじめ⼊れておいたDNAの材料を温度下げて結合させて、複製を作る⽅法です。1サイクルでふえたDNAを希釈分注し、材料を追加し、複製を数⼗回繰り返します。⼤量のサンプルを扱うことや間違いが許されないこの作業は⾃動分注装置が適しています。

遺伝子発現解析

ヒトゲノム計画で人間の遺伝子は解析されましたが、まだ、個々の遺伝子がどのような役割を果たしているのか完全に解明されていません。 DNAで構成されている遺伝子は、その情報を元に主にタンパク質を作りだし、生物の中で機能させています。これを遺伝子発現といいます。 すべての遺伝子がいつも発現しているわけではなく、病気などとの結びつきも研究されています。この研究でも、分注装置が試薬の調整など、大きな役割を果たしています。

臨床検査と分注装置

臨床検査と分注装置

臨床検査は病気の有無、程度、原因を数値で⽰すもので、健康診断で⾏われる⾎液や尿検査、⼼電図や⾎圧測定も臨床検査です。臨床検査は被験者の⾝体そのものをしらべる⽣理機能検査と被験者からとりだされた検体を調べる検体検査に分けられます。分注装置が活躍するのは検体検査です。

検体検査

⼤量の検査、多くの検査を⾏うため、分注装置が⽤いられています。例えば、⾎液検査では、⾎液中に含まれるコレステロール、⾎糖、中性脂肪などの量を定量したり、免疫反応で⽣じた⾎液中の抗原や抗体の量を測定します。 この免疫化学検査は、有る抗体だけに反応する物質を加え、反応物質を酵素や発光反応を利⽤して量を計ります。さらにウィルス検査では、DNA鑑定と同様に複製によって、ウィルスの遺伝⼦を検出しますが、分注装置が培養や複製に使⽤されます。

タイピング

遺伝子の違い(遺伝子多型)によって、糖尿病、がん、リウマチ、喘息などの「病気のかかりやすさ」が違うことがわかってきました。 SNP(1塩基多型=1つの塩基の違いによる多型)は人間では300万あることになり、比較的検出しやすいく、病気の 遺伝子を探す有効な手段となります。 しかし、統計手法上1つのSNPと特定するために1000人のサンプルの検査が必要で、解析の必要な遺伝子数は億のオーダーになります。 この研究でも分注機が不可欠です。

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